梅雨入りの目安となる6月11日の入梅を過ぎると、いよいよ長い梅雨の時期が訪れる。連日の雨、雨、雨……。ジメジメとまとわりつく空気に気分もドンヨリ、外出もつい億劫になりがちなこの時期だが、今回の映画「いま、会いにゆきます」を見ると、そんなマイナス・イメージが一転、梅雨がなんだか美しくて崇高なものに思えてくるから不思議だ。 「世界の中心で、愛をさけぶ」とともに、純愛ブームの火付け役となったこの作品は、市川拓司の同名ベストセラー小説を映画化したものだ。“雨の季節に帰ってくる”という言葉を遺しこの世を去った澪。そんな彼女を想いながら、ともに助け合って暮らしている巧と息子の佑司のもとに、ある日死んだはずの澪が現れる。“梅雨が終わるまで”という限られた時間の中で3人のかけがえのない物語は始まる。 家族愛・親子愛・男女の愛と、様々な愛の形を柱に、前半と後半でガラリと違う顔を見せる本作。澪はなぜ再び現れたのか、この奇蹟はなぜ起こったのか? そんな疑問は物語の後半、鮮やかな手法で明かされるのだが、物語のカギを握るのが日照量日本一を誇る明野のヒマワリ畑のシーンだ。お互い好意を持っているのに、なかなか縮まらない2人の距離。その距離感こそが純愛映画の醍醐味であるが、巧と澪も挨拶が精一杯だった高校時代から紆余曲折を経て、このヒマワリ畑でようやく思いを確かにする。 |
ところで、ヒマワリには「あなただけを見つめている」という花言葉があるという。記憶を失くした澪と一緒に暮らす中で、彼らはお互いを気遣い、想い、再び家族としての絆を深めていくのだが、別れが近いと知った澪が佑司と一緒に植えたのもヒマワリの種だった。彼らの想像通り澪との2度目の別れが訪れたとしても、クライマックスで流す涙は決して悲しいものではなく、心を温かくするものであるはずだ。 「私とあなたはずっと一緒なの。そう、たった1人の相手なのよ……」 ヒマワリ畑で実った恋は、溢れんばかりの愛を注がれて大輪の花を咲かせる。巧の優しさ、佑司の一途さ、澪の強さが心に残る奇蹟の6週間が終わると、太陽とヒマワリの季節はもう目の前だ。 |
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監督:土井裕泰 雨とともに現れる妻、澪を演じるのは竹内結子。その澪を不器用ながらも優しく迎え入れる夫・巧を演じるのは中村獅童。そして物語のカギとなる二人の息子・佑司を演じるのは『丹下左膳 百万両の壺』でそのみずみずしい演技が絶賛された小学一年生の武井証。監督はドラマ『オレンジデイズ』や『GOOD LUCK!!』などを手がけた恋愛ドラマの名手・土井裕泰。 妻に先立たれながらも6歳の息子・佑司(武井証)とふたりで幸せに暮らしている秋穂巧(中村獅童)。そんな彼らの前に、一年前に逝ったはずの妻・澪(竹内結子)が梅雨のはしりの雨の日に現れる。ただ彼女は一切の記憶を失っていた。巧と佑司はそんな澪を温かく迎え入れ、三人の不思議な共同生活が始まる。やがて巧と澪は「二度目」の恋に落ちることになる。そして佑司は「二度目」の母との生活に喜びを感じていた。六週間後、雨の季節が終わりを告げるのとともに、澪は再び巧たちの前から去っていく運命にあった。しかし、澪は巧と佑司の心に生涯消えることのないある宝物を残していくことになる…。 |
『いま、会いにゆきます スタンダード・エディション』
・発売日:発売中・発売元:博報堂DYメディアパートナーズ・小学館 ・販売元:東宝 ・価格:¥3,990(税込) |