『ゴールデンスランバー』、『重力ピエロ』、『Sweet Rain 死神の精度』など、著作が次々と映画化されている人気作家・伊坂幸太郎。現在仙台在住の伊坂は、これまで仙台を舞台にした作品を多く発表しているが、今回の『アヒルと鴨のコインロッカー』もまた同じ仙台を舞台に繰り広げられる若者たちの愛と青春のミステリアスな物語である。 「一緒に本屋を襲わないか」引越し先のアパートで、隣人・河崎からいきなり声をかけられた大学生の椎名。彼は同じアパートに住むブータン人留学生・ドルジに広辞苑をプレゼントするという河崎の誘いを断りきれずにその申し出を受けてしまう。映画では、図らずも本屋襲撃に加わることになった椎名の目を通して、河崎のある秘めた思いと衝撃の事実を浮かび上がらせていくのだが、実はこの作品、原作が持つトリッキーな構成ゆえ映像化は難しいといわれていたものだ。 現在の椎名と河崎、そして2年前のドルジとその恋人・琴美との関係が交錯して描かれるこの物語は、前半はややコメディ調、そして後半になるとぐっと切なさを増す青春モノと雰囲気が変わっていくのだが、そんな物語全体のターニングポイントとなるシーンが撮影されたのが、仙台市八木山動物公園だ。ドルジと琴美と河崎が出会った場所として登場するこの動物園は、仙台市を一望できる高台にあり、約140種類・およそ550点の動物が飼育されている仙台市民の憩いの場所。ホッキョクグマやライオンなどが間近に見られるとして人気のスポットとなっている。 |
このほかにもオール仙台ロケで行われた本作では、椎名が通う大学として撮影された東北学院大学・泉キャンパスや、椎名が住むアパートがある歩坂町、赤い“BOOK”という看板が目をひく塩釜の<ブックスなにわ>、河崎が毎夜出かけていく野蒜海岸など、杜の都・仙台の何気ない場所が撮影場所として使われている。そしてもうひとつ、忘れてはならないスポットがJR仙台駅だ。映画のラストに登場するこの場所は、この作品のタイトル『アヒルと鴨のコインロッカー』の意味が鮮やかに明かされるシーンとして深い印象を残すが、駅構内には椎名が食べたいと切望していた仙台名物・牛タンの店が並ぶ「牛タン通り」や、お土産・工芸品のフロアもあり、鉄道の旅ならずとも立ち寄ってみたい場所である。 仙台散策のお供はもちろん、ボブ・ディランの名曲「風に吹かれて」。“神の歌声”とともにこの町を歩いてみれば、きっと河崎、ドルジ、琴美、椎名のかけがえのない一瞬が目の前に浮かんでくるはずだ。 |
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監督:中村義洋 原作は、仙台在住の気鋭人気ミステリー作家・伊坂幸太郎の小説「アヒルと鴨のコインロッカー」。『シュガー&スパイス 風味絶佳』など、個性派俳優として注目を集める俳優濱田岳と、映画『どろろ』やTVドラマ「のだめカンタービレ」などの実力派俳優・瑛太がW主演。ちょっとおどおどしながら河崎に振り回される椎名と、どこか孤独でミステリアスな雰囲気を漂わせる河崎のコンビが、リアリティをもって誕生した。また、まっすぐで明るくはつらつとしたヒロインには、『ハチミツとクローバー』など、さわやかで凛とした魅力を放つ関めぐみ。そして、存在感ある演技で話題作への出演が相次ぐ松田龍平が、物語のカギを握る重要な役割を果たす。監督は、『刑務所の中』『クイール』『仄暗い水の底から』などの脚本家としても知られ、『ルート225』で高い評価を得た俊英・中村義洋。巧妙に構成された物語を、みごと映像化することに成功した。 大学入学のために単身仙台に引っ越してきた19歳の椎名(濱田岳)はアパートに引っ越してきたその日、奇妙な隣人・河崎(瑛太)に出会う。彼は初対面だというのにいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的はたった一冊の広辞苑。そして彼は2年前に起こった、彼の元カノの琴美(関めぐみ)とブータン人留学生と美人ペットショップ店長・麗子(大塚寧々)にまつわる出来事を語りだす。過去の物語と現在の物語が交錯する中、すべてが明らかになった時、椎名が見たおかしくて切ない真実とは…。 |
『アヒルと鴨のコインロッカー』
・発売日:発売中・発売元:株式会社デスペラード ・販売元:アミューズソフトエンタテインメント株式会社 ・価格:¥4,935(税込) ・(C)2006「アヒルと鴨のコインロッカー」製作委員会 |