鎌倉時代に曹洞宗を開いた禅師、道元の生涯を描いた映画、『禅 ZEN』。この映画の主人公、座禅をしている姿そのものが“仏”であり、座禅に打ち込むことこそが最上の修行であるとする「只管打坐(しかんたざ)」を説いた道元は、今なお多くの宗教家たちを魅了する存在である。 “座禅”という言葉から現代人が連想するのは、ただひたすらストイックなイメージなのではないだろうか。ともすれば単純に説教くさくなってしまうこの題材を、美しい日本の四季を織り交ぜながら、エンタテインメント性を交えて描き、宗教的な知識のない人間にも親しみを持たせて描いたことが、本作が静かに名作として愛されている理由である。 その美しい風景のひとつとして選ばれたのが、600年以上の歴史を持つ曹洞宗の襌寺、黒羽山・大雄寺だ。曹洞宗の総本山である当時の永平寺として撮影に使用された大雄寺では、若手の雲水(禅宗の修行僧)たちの修行シーン等が撮影された。当時の永平寺の雰囲気によく似ていることと、寺院の主要な建物の配置が非常に近いことから、この寺が選ばれたそうだ。 |
また、同じ栃木県内の栃木市にある大中寺でも撮影が行われた。大中寺は別名“あじさい寺”とも呼ばれ、最盛期には観光客も多数訪れる名所。山門までの200mの参道には色とりどりのあじさいが咲きみだれ、参拝客の目を楽しませてくれる。この他にも栃木市には、巴波川のほとりに連なる“蔵”など、近年注目を浴びている歴史的なスポットも多数残っている。 美しい四季の移り変わりとともに描かれる、道元の思い。難解な専門用語や悟りの理念は分からなくとも、この映画からはどことなく“赦し”を得られるような気がする。純粋なひとりの禅師の思いは、現代にしかと受け継がれている証拠なのかもしれない。 |
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監督:高橋伴明 人と人とが共に生き、喜びや悲しみを分かち合い、明日への希望の光をどのように見出していくか…を、道元禅師の清冽な生涯を通して描く感動の歴史ロマン。人々を支え続ける道元禅師を演じるのは、歌舞伎界のスター、中村勘太郎。またヒロインのおりんを、進境著しい内田有紀が可憐に好演。さらに苦悶する時の執権、北条時頼に藤原竜也。さらに競演陣として、村上淳、哀川翔、勝村政信、笹野高史、西村雅彦、高橋恵子など、豪華キャストが顔を揃えた。原作は「永平の風 道元の生涯(文芸社刊)」の大谷哲夫。監督・脚本は、『光の雨』や『火火(ひび)』などで数々の映画賞に輝く実力派監督、高橋伴明。今にも通じ、誰にも、どこにでも通じる精神世界を、俳優たちの絶妙な演技と澄み渡る映像美とで崇高に描ききっている。 「この現世の中で、何故、人は争い、病の苦しみ、死の苦しみから逃れられないのでしょう…、そなたに、その苦しみから抜ける道を見つけて欲しい…。」そう言い遺しこの世を去った母・伊子。幼くして母と死別した道元(中村勘太郎)は、24歳で仏道の正師を求めて入宋。不思議な縁に導かれ、天童山景徳寺如浄禅師の許へ。そこで修行を積み、ついに悟りを得る。帰国した道元を乱世が待ち受ける。時の権力者から遊女にいたるまで、多くの人々が苦悩を抱えていた。道元は二度にわたり寺を追われるも、門弟らと共に真の仏法建立に努め、越前志比庄に大仏寺(現永平寺)を建立。宋からわたってきた寂円(テイ龍進)、のちに正伝を授ける懐奘(村上淳)ら門弟、さらには近隣の住人たちへの指導に励む。雪深い冬の永平寺。参禅の鐘が鳴る中、僧堂で坐禅をする道元。命朽ち果てても尚、坐禅を続ける姿に、僧たちは静かに涙を流すのだった…。 |
『禅 ZEN』
・発売日:発売中・ 発売元・販売元:アミューズソフトエンタテインメント株式会社 ・価格:¥3,990(税込) ・(C) 2009「禅 ZEN」製作委員会 |