大河ドラマや歴史をテーマにしたゲームのヒット、各地で行われる歴史検定など、にわかな歴史ブームとなっている近頃。様々な時代を取り上げた史劇や時代劇が人気を集めている。ではなぜ今、歴史が人を惹きつけるのだろうか?
それは現代を生きる私たちにとって、歴史の中の人物たちの「信念を貫く生き様」が、美しく見えるからかもしれない。そこで今回は、古き良き日本の魅力を感じられる珠玉の時代劇をご紹介しよう。作家・藤沢周平氏の最高傑作と言われる小説を映像化した映画「蝉しぐれ」である。 「蝉しぐれ」は江戸時代、東北の小藩で生きる主人公・牧文四郎の少年時代から青年期にかけて繰り広げられる物語だ。文四郎が逆境に立ち向かいながらも成長する過程には「父への敬意」「友情」「一途な恋」「地位や名誉を追わない慎ましい暮らし」「大切な人を守る命懸けの戦い」など、かつて日本人が理想とした「あるべき姿」が描かれている。 劇中で特に印象的なのは、日本の春夏秋冬を映した季節の風景だ。10年以上かけてロケハンしたという本作は、全国各地で大規模なロケ撮影が行われ、原作の世界観を忠実に再現している。 そのロケ地のひとつとして選ばれたのが、天下の名城・彦根城である。琵琶湖八景にも数えられる、白亜の天守閣で知られる彦根城。明治時代の廃城令や戦火を免れ、勇壮な姿を保つこの城は、他の時代劇でも度々ロケ地となっている。本作では天守閣こそ登場しないものの、城内にかかる橋や梅林で撮影が行われたという。例年、春には450本もの紅梅・白梅が春の訪れを告げるこの梅林は、彦根城の見どころのひとつにもなっている。 |
これからの季節に彦根城を訪れるならば、城内一帯にかけて彩られる紅葉を楽しむこともできるだろう。想い深まる秋。劇中で描かれた美しい日本の四季を体感しながら、日本人が古来大切にしてきた「風土とともに生きる暮らし」「人々の美しい心」に想いを馳せてみてはいかがだろうか。 |
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監督:黒土三男 市井の人々の強さと優しさを描き続けた作家・藤沢周平の最高傑作を映画化。主役の文四郎を演じるのは、映画『四月物語』『阿修羅城の瞳』に出演するなど、活躍の場を広げる人気歌舞伎役者の市川染五郎。また、文四郎の幼馴染で、清くそして悲しい恋の相手となるおふくには、『模倣犯』『阿修羅のごとく』の木村佳乃が扮している。さらに、『亡国のイージス』の原田美枝子、『隠し剣 鬼の爪』の緒形拳、『マインド・ゲーム』の今田耕司などが脇を固める。監督を務めるのは、作品に対する熱い思いで、藤沢先生との映画化交渉開始から足掛け15年余の月日をかけてついに本作のメガホンをとった黒土三男。 江戸時代末期、東北の小藩・海坂藩。牧文四郎(市川染五郎)は、下級武士である養父の下で育った。だが、父は藩の派閥抗争に巻き込まれ、冤罪によって切腹を命じられる。その後、謀反人の子として数々の試練が待ち受けるが、幼なじみたちの助けと、剣の鍛錬によって日々を質素に、そして懸命に母とともに生きる。ある日、文四郎は筆頭家老から牧家の名誉回復を言い渡されるが、これには深い陰謀が隠されていた。文四郎は、藩主側室となり派閥抗争に巻き込まれた初恋の人、ふく(木村佳乃)を命懸けで助け出すことになるのだが…。 |
『蝉しぐれ プレミアム・エディション』
・発売日:発売中・発売元:電通/ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント ・販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント ・価格:¥4,935(税込) ・©2005「蝉しぐれ」製作委員会 |