本格的な寒さの到来とともに、今年もまた街角のイルミネーションが眩しい時節がやってきた。肌寒さと街の賑わいが、自然と人恋しさを募らせる…そんな時には、情熱的な大人の愛の物語で心を温めてはいかがだろうか。今回ご紹介するのは、「アイルケ」の愛称で映画化・ドラマ化され、一大ブームを巻き起こした「愛の流刑地」である。 映画「愛の流刑地」は、「失楽園」で知られる作家・渡辺淳一氏の長編小説を映像化した作品。落ちぶれたベストセラー作家・菊治と人妻・冬香の許されぬ愛を描いた物語だ。官能的なイメージが強い本作だが、映画版では究極の愛のひとつの形として文学的な美しさを感じさせてくれる作品に仕上がっている。そんな作風を支えているのが繊細な情景描写だ。 ふたりの逢瀬の舞台を彩るのは、秋の京都の寺社。菊治と冬香が雨の中で再会するシーンは、京都市北区に位置する上賀茂神社内の庭園・渉渓園(しょうけいえん)で撮影された。このシーンで印象的に映し出される根元から絡み合う大木が、ふたりの未来を暗示しているようだということから監督がロケ地に選んだと言われている。 |
渉渓園は、平安時代の様式を再現した美しい庭園である。4月には献歌行事「賀茂曲水宴」が行われ、平安衣装に身を包んだ一流の歌人によって和歌が詠まれるという。残念ながら渉渓園は通常、一般開放されていないが、この曲水宴や特別開放行事の折には見学することができるので、ぜひチェックして雅な京の雰囲気を味わいたいものだ。また上賀茂神社は、春には桜、秋には紅葉の名所としても知られており、一年を通して多くの参拝客が訪れる。庭園の開放時期ならずとも、京都を旅する際にはぜひ訪れたいスポットだ。 しっとりと落ち着いた雰囲気を醸し出す京都の寺社の風景は、愛を求めて激しく惹かれあったふたりの逢瀬を、静かに、そして妖艶に引き立てている。寒さに身も心も凍える季節。ドライブデートの行先に京都を選べば、いつもとは少し違った大人の雰囲気を楽しめるかもしれない。 |
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監督:鶴橋康夫 ベストセラー作家・渡辺淳一が、男と女の根源的な相違をテーマに、深遠な愛を描いた恋愛小説「愛の流刑地」を映画化。日本経済新聞で連載された同作は、読者である経営者、サラリーマン、そしてOLの間で、その過激さゆえに賛否両論を巻き起こすなど、日本中を"愛ルケ"現象で覆いつくした。監督・脚本を務めるのは、数多くのドラマ演出を手がけ、「永遠の仔」「砦なき者」などテレビ史に燦然と輝く作品を数多く世に送り出した鶴橋康夫。そして、主人公・村尾菊治役に豊川悦司、入江冬香役に寺島しのぶと、映画界を代表するトップスターのふたりが、文字どおり全身全霊を込めて、"菊治と冬香"の愛の軌跡を熱演している。 ある朝情事の果てに女性を絞殺した男が逮捕された。男はかつて恋愛小説の旗手として注目された作家・村尾菊治(豊川悦司)。被害者の名は入江冬香(寺島しのぶ)。菊治は自分のファンの人妻・冬香と出会い、恋に落ちた。愛されることを知らずに生きてきた冬香。逢瀬のたびに心と躰を烈しく求め合うふたり。そして「首を締めて欲しい」という冬香の求めに応じ、菊治は冬香を殺めてしまう。「なぜ男は女を殺したのか、そしてなぜ女は死を望んだのか」、事件を担当する女性検事・織部美雪(長谷川京子)は、この疑問を抱えたまま裁判の時を迎える。そして法廷の扉が開かれた。今、愛と死の真相があきらかになる。 |
『愛の流刑地(2枚組)』
・発売日:発売中・発売元:バップ ・販売元:東宝 ・価格:¥5,040(税込) ©2007「愛の流刑地」製作委員会 |