離れて暮らす家族や親戚と顔を合わせたり、年賀状をやりとりしたり…。毎年同じことを繰り返しながらも、やはり正月は家族の絆を暖かく感じさせてくれる季節である。そんな新年の幕開けには、美しい夫婦の絆を描いた時代劇を、ゆっくりと堪能してみてはいかがだろうか。山田洋二監督が描く時代劇三部作「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続く第三作、「武士の一分」である。 「武士の一分」とは、侍が命をかけて守らなければならない名誉や面目の意味。幕末の小藩に暮らす下級武士・新之丞が妻のために命を懸けて闘う物語は、強く美しい夫婦愛を感じさせてくれる。慎ましくも幸せなふたりの暮らしぶりを丁寧に描いた、こだわりのセットやロケーションも必見だ。 物語のクライマックス、妻を騙した上司・島田と新之丞の果たし合いのシーンは、静岡県を流れる大井川の河川敷で撮影された。撮影時には河原にオープンセットを組み、荒涼とした決闘の舞台を表現したという。劇中では、崩れかけた馬小屋と枯れ草が生い茂る河原の風景が、命を懸けた闘いの緊張感を見事に表している。 |
実際の大井川周辺は、駿河湾沿いの海岸で楽しめるマリンリゾートから、茶畑が広がる山間部まで、自然の景勝地の多いエリア。とくに大井川沿いを走る大井川鉄道周辺は、レトロな蒸気機関車の運行や、温泉、茶畑など観光地としての魅力も満載だ。同鉄道では、自動車の旅でもSLを楽しめるよう、マイカーの陸送サービス(有料)も行っているので、ドライブの途中でSL乗車体験をすることもできる。情緒ある日本の河川の風景を楽しみながら、家族でのんびりと旅するにはもってこいのスポットだ。 夫婦が一途に相手を想い、守る姿を描いた本作は、心の通じた家族と暮らす平穏な日々が、命を懸けて守るほど、かけがえのないものなのだと思い出させてくれる。家族や親戚が集まる機会の多いこの季節。あらためて家族の絆を深めるドライブ旅行でも計画してみてはいかがだろうか。 |
|
|||||||||
監督:山田洋次 藤沢周平の「盲目剣谺返し」を、『たそがれ清兵衛』『隠し剣鬼の爪』の山田洋次監督が映画化。失明によって過酷な運命を余儀なくされる主人公、三村新之丞を演じるのは、ウォン・カーウァイ監督『2046』でカンヌ国際映画祭に参加するなど、世界的なクリエイターからも熱い視線を注がれる木村拓哉。また、愛する夫を必死に支える献身的な妻・加世を、元宝塚歌劇団主演娘役の檀れいが好演している。さらに、新之丞の叔母・以寧を桃井かおり、新之丞の剣術の師匠・木部を緒形拳、毒見役の事故の責任をとって切腹する広式番・樋口を小林稔侍、若い夫婦に仕え、時には年長者として知恵を働かせる中間・徳平役を笹野高史が演じるなど、演技派の俳優陣が脇を固める。 三村新之丞(木村拓哉)は、最愛の妻・加世(檀れい)とつましく暮らす、海坂藩の下級武士。「早めに隠居して、子供がたに剣を教えたい」と夢を語る、笑いの絶えない平和な日々は、藩主の毒見役をつとめて失明した日から暗転する。絶望し、自害しようとする新之丞を加世は必死に思い留まらせるが、愛する夫のため、口添えを得ようとして罠にはまり、番頭・島田藤弥に身を捧げてしまう。義を重んじ、卑怯を憎む侍としての「心」と、ひとりの男としての「愛」の狭間で、新之丞の怒りは激しく燃え上がり、己の「一分」をかけた復讐を心に誓う。しかし島田は藩内きっての剣の使い手。目の見えぬ新之丞の無謀な果たし合いに勝機はあるのか、そして失われた夫婦の愛情は再び取り戻せるのか…。 |
『武士の一分(ブルーレイ)』
・発売日:発売中・発売元・販売元:松竹 ・価格:¥4,935(税込) ©2006「武士の一分」製作委員会 |