2時間サスペンスドラマでお馴染みのシーンと言えば、崖っぷちで登場人物が過去の告白をする場面。今ではすっかり定番になっているが、実はネタ元ともいえる原型になっているのが、松本清張原作のミステリー映画『ゼロの焦点』だ。1961年に初めて映画化されており、2009年の本作では広末涼子、中谷美紀、木村多江が共演したことでも話題になった。 戦後の混乱期が舞台のこの作品は、主人公・禎子が、失踪した夫の憲一の行方を追ううちに連続殺人事件に遭遇する。その犠牲者はいずれも憲一とかかわりのある人物。一方、彼女は憲一の行方を探す中で、社長夫人の佐知子と受付嬢の久子という2人の女性に出会う。新しい時代に新たな人生を踏み出そうとする佐知子と久子、憲一との関係は?そして、殺人事件の犯人は?ミステリーの要素と人間ドラマがあいまって、見ごたえのある作品となっている。 |
ミステリーの鍵となる、崖っぷちのシーンのロケ地となっているのは、石川県の「ヤセの断崖」だ。能登金剛と呼ばれる、能登を代表する景勝地の中にある断崖絶壁で、高さは35メートル。地名の由来には「下を見ると怖さでやせる思いがするから」という説もあるほどの、日本海にせり出すような切り立った断崖だった。断崖の上には展望台があり、そこからは日本海のパノラマを一望することができる。また、崖に沿って遊歩道が設けられており、スリルを感じながら散策することも可能だ。 その遊歩道を80メートルほど行ったところには「義経の舟隠し」がある。こちらは断崖が2つに割れた入り江で、兄・頼朝に追われた源義経が奥州に向かう際に、厳しい追手から逃れるため、そして嵐を避けるために48隻の舟を隠したといわれる場所。こちらも見事な景観だ。 日本海の荒波に浸食されてできたこの一帯は、ほかにもさまざまな見どころがある。『ゼロの焦点』の登場人物たちの波乱の運命を表すような豪快に打ち付ける激しい波と、ヤセの断崖を始めとする、美しい能登金剛の景色。この地に立って、彼らの思いを感じてみてはいかがだろうか。 |
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監督:犬童一心 「砂の器」「点と線」に並び称される松本清張の不朽の名作「ゼロの焦点」を映画化。出演は、米アカデミー外国語映画最優秀作品賞受賞作「おくりびと」のヒロイン役で世界中から注目を集めた広末涼子を筆頭に、「嫌われ松子の一生」で日本アカデミー最優秀主演女優賞ほか各国映画賞を総ナメにした中谷美紀、「ぐるりのこと。」で日本アカデミー最優秀主演女優賞とブルーリボン主演女優賞をW受賞した木村多江と、演技派の3人の女優陣。さらに西島秀俊、鹿賀丈史、杉本哲太ら豪華男優陣が脇を固め、人間ドラマの名手・犬童一心が監督を務めている。 結婚式から7日後。仕事の引継ぎのため、以前の勤務地である金沢に戻った夫・鵜原憲一(西島秀俊)は、そのまま帰ってこなかった。憲一の足跡をたどって北陸・金沢へと旅立った禎子(広末涼子)は、憲一のかつての得意先・室田耐火煉瓦会社で、社長夫人の佐知子と出会う。そして、彼の行方をたどる唯一の手がかりを、田沼久子という受付嬢が握っていることを知った。失踪には、夫の過去が関係している。禎子が真相に迫るにつれて、失踪に関わりのある人間が、ひとり、またひとりと次々に殺されていく。連続殺人事件の犯人は?そして、その目的とは…。 |
『ゼロの焦点(2枚組)』
・発売日:発売中・発売元:株式会社電通/株式会社テレビ朝日 ・販売元:東宝株式会社 ・価格:¥5,040(税込) ©2009「ゼロの焦点」製作委員会 |