海はさまざまな表情を見せてくれる。時に穏やかで、時に荒々しく、それはまるで人間の人生を表しているかのようでもある。中居正広主演の映画『私は貝になりたい』では、主人公の豊松や妻の房江が人生のターニングポイントを迎える場面に崖の上の草原が出てくる。青空の下、緑が広がる風景は、戦争にほんろうされた2人の人生と相まって、非常に印象的だ。 第二次世界大戦中の昭和19年。清水豊松は妻の房江と共に、高知の海沿いの町で理髪店を営んでいた。駆け落ち同然でこの町にやってきた2人の生活は決して楽ではなかったが、店の経営もようやく軌道に乗り、息子の健一もすくすくと成長していた。そんなある日、豊松に召集令状が届く。軍隊は過酷で、上官の命令は絶対。豊松はアメリカ兵に銃剣を突き刺すことを命じられ、やむなくそれに従ったのだった。そして終戦を迎え、再び理髪店で働き始めた豊松。しかし突然、彼の店に占領軍が現れ、豊松は戦犯容疑で逮捕される…。 |
豊松と房江が結婚を決意し、さらに豊松が戦犯容疑で逮捕されたときに立ち寄った場所が島根県・西ノ島町の国賀海岸にある摩天崖(まてんがい)だ。この作品では、海を見下ろす形で登場していたが、実は切り立った崖の高さは257メートル。波の侵食によってできた海食崖としては日本一の高さを誇る。また、崖の上の草原には牛や馬が放牧され、牧歌的な風景を楽しむことができる。 この摩天崖を含む国賀海岸一帯は国の天然記念物、国立公園にも指定された景勝地で、ほかにも明暗(あけくれ)の岩屋や通天橋など、日本海の荒波に削られてできた崖や洞窟が約7キロ続いている。こうした景観は、定期観光船が出ているこの時期なら、陸地だけでなく、海からも楽しむことが可能だ。 |
また、西ノ島には、かつて後醍醐天皇が1年間を過ごすことを余儀なくされた黒木御所、海上安全の神様を祭る焼火神社、海中に鳥居が建っている由良比女神社などの史跡もある。
普段のあわただしい生活を離れ、長きに渡って大自然が作り上げた西ノ島の風景やさまざまな史跡に触れてみよう。自分なりの人生のターニングポイントがつかめるかもしれない。
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監督:福澤克雄 戦後わずか10数年の1958年(昭和33年)、テレビ草創期に制作されたドラマ「私は貝になりたい」を映画化。理髪店の主人というごく平凡な一市民である豊松を主人公として、愛する家族との間を『徴兵』そして『逮捕』と二度にわたって引き裂かれる不条理が描かれている。ドラマでフランキー堺が演じた理髪店の主人、清水豊松に扮するのは、SMAPのリーダーとして八面六臂の活躍を続ける中居正広。また妻の房江を、06年の大河ドラマ「功名が辻」で、主役の千代を見事に演じ、今や映画界にも欠かせない存在となった仲間由紀恵。そのほか、石坂浩二、上川隆也、笑福亭鶴瓶ら、日本を代表する俳優が集結した。監督は、ドラマ「砂の器」「華麗なる一族」などの演出を手掛けた福澤克雄。 清水豊松(中居正広)は高知の漁港町で、理髪店を開業していた。家族は女房の房江(仲間由紀恵)と一人息子の健一(加藤翼)。決して豊かではないが、家族三人理髪店でなんとか暮らしてゆく目鼻がついた矢先、豊松の元にもついに赤紙が届き、中部軍の部隊へと送られる。やがて終戦を迎え、ようやく家族との再会を果たした豊松だったが、2人目の子どもを授かり、これからというときに、今度はミリタリーポリスに捕らえられてしまう。容疑は従軍中の捕虜殺害。絶対服従の上官命令に従っただけの豊松は無実を主張するが、非情な判決が下され…。 |
『私は貝になりたい スタンダード・エディション』
・発売日:発売中・発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント ・価格:¥3,990(税込) ©2008「私は貝になりたい」製作委員会 |