本当は倹約しなければならないのに、見栄や体裁を気にしたり、欲望に負けたりして、つい散財してしまう…。こんな経験は誰しも覚えがあるのではないだろうか。映画『武士の家計簿』は江戸時代、藩の財政にかかわってきた武士が、藩はもちろん、家計の建て直しにも取り組み、家族と共につつましく暮らす様子を描いた作品である。
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加賀藩の御算用者として仕えてきた猪山家。その八代目である直之は大きな野心もなく、日々そろばんをはじいて生真面目に仕事に取り組む姿から、周りに「そろばんバカ」と呼ばれていた。ある日、直之は経理の不正に気づく。これにより、私腹を肥やす上司から左遷を命じられるが、問題が明るみに出ると人事が一新。逆に昇進を果たすのだった。しかし、身分が上がると出費はかさみ、猪山家の家計は危機的状況に。そこで直之は、必要最低限のもの以外の家財をすべて売り払うことを決断し、倹約生活を送る。さらに質素倹約の知恵は仕事にも生かされ、藩主を喜ばせるのだった…。監督は森田芳光。主役の直之は堺雅人、直之を支える妻・お駒は仲間由紀恵が演じている。 |
映画に何度も登場する金沢城のシーンは、金沢城公園でロケが行われた。実際の城は度重なる火災で焼失したために1999年から復元工事が行われ、現在のようになった。しかし、その周囲に作られた石垣は、前田利家が入城した頃が分かるものとして今も残っている。金沢城の石垣は場所によって様式を使い分け、火災や地震により修築が繰り返されたために、全国に類を見ないほど多種多様の工法が使われている。城内及び城の外周には石垣めぐりの散策路も整備されているので、昔に思いを馳せながら見て歩くといいだろう。 |
また、金沢城公園では兼六園と共に年に数回ライトアップが行われている。11月にも2度予定されており、期間中はミニコンサートやカフェの出店もある。カフェでは金沢出身のパティシエ、辻口博啓氏のスイーツも登場。幻想的な風景と共に楽しみたいところだ。
ほかにも金沢は見どころが多く、加賀野菜や海の幸の郷土料理にも心を惹かれる。思わず財布の紐が緩みそうだが、旅の間だけならお金に厳しい直之も許してくれるだろう。
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監督:森田芳光 原作は、幕末の武士の生活を生き生きと読み解いた磯田道史著「武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新」(新潮新書刊)。監督は常に時代を様々な角度から切り取り、家族の在り方を描いてきた森田芳光。主演は、NHK大河ドラマ「篤姫」の魅力的な家定役で話題をさらい、近年『南極料理人』『ゴールデンスランバー』など幅広い役柄で次々と新たな顔を見せる演技派、堺雅人。直之を支える献身的な賢妻・お駒に「功名が辻」の武将・山内一豊の妻・千代役で芯の強い女性を見事に演じた仲間由紀恵。そして、松坂慶子、中村雅俊、草笛光子、西村雅彦ら豪華キャストが勢ぞろいした。 幕末から明治。激動の時代を知恵と愛で生き抜いたある家族がいた。代々加賀藩の御算用者(経理係)である下級武士の猪山直之(堺雅人)は、家業のそろばんの腕を磨き出世する。しかし、親戚付き合い、養育費、冠婚葬祭と、武家の慣習で出世のたびに出費が増え、いつしか家計は火の車。一家の窮地に直之は、"家計立て直し計画"を宣言する。家財を売り払い、妻のお駒(仲間由紀恵)に支えられつつ、家族一丸となって倹約生活を実行していく。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは…。 |
『武士の家計簿』
・発売日:発売中・発売元:アスミック/松竹 ・販売元:松竹 ・価格:¥4,935 (税込) ©2010「武士の家計簿」製作委員会 |