何かをやりぬこうと思っても、その気持ちを維持するのは簡単ではない。長い間には挫折しそうになることもあるはずだ。映画『最後の忠臣蔵』は大石内蔵助の最後の命令に従うために生き延びて力を尽くした、2人の武士を描いた作品である。
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亡き主君の無念を晴らすため、吉良上野介邸に討ち入った赤穂浪士。しかし、その中には大石に将来を託された2人の武士がいた。1人は寺坂吉右衛門、もう1人は瀬尾孫左衛門。寺坂は討ち入りに加わったものの、大石から「真実を後世に伝え、赤穂浪士の遺族の手助けをせよ」と命じられた。一方の瀬尾は間もなく生まれる大石の隠し子を育てるよう言われ、討ち入り前日にひとり姿をくらましていた。16年という長い時を経て、2人は再会。そして、初めて互いのこれまでを知るのだった…。瀬尾孫左衛門は役所広司、寺坂吉右衛門は佐藤浩市が演じており、他に伊武雅刀、安田成美などが出演している。 |
映画の中で大石の隠し子である娘・可音が、彼女に恋心を抱く豪商の息子・修一郎に声をかけられるシーンがある。そのロケ地が滋賀県近江八幡市にある八幡堀だ。豊臣秀吉の甥である秀次が八幡城の城下町を開いた際に整備した堀で、琵琶湖とつないで船を行き来できるようにし、町の活性化につなげた。堀に沿って白壁の土蔵や旧家が建ち並ぶ町並みは風情があり、観光地として知られるだけでなく、この作品を始めとするさまざまな映画やドラマにも登場している。町の様子はこの堀を船で行く「八幡堀めぐり」でも見ることができる。 |
また、作品中で瀬尾が暮らしていた家とされているのは「石の寺 教林坊」である。聖徳太子が創建したこの寺は、どんな困難な願い事も2度詣でれば叶うという「再度詣りの観音さま」として信仰されている。竹林に囲まれた約2000坪の境内には200本以上のもみじの大木があり、12月10日までは毎日、その後も土日祝日に見事な風景が見られる。1月、2月は拝観休止となるが、春には新緑に彩られた様子を楽しめる。 今に当時の姿を伝える風景は、長く努力した寺坂や瀬尾の思いにも通じるものがある。師走の忙しい合間を縫って、出かけてみたい場所だ。 |
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監督:杉田成道 1703年の元禄赤穂事件から16年後、二人の生き残りを描くという、今までの忠臣蔵の作品とは違った角度からとらえている池宮彰一郎の小説「最後の忠臣蔵」。 『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』 で知られる田中陽造が大胆に脚色、心に響く脚本へと見事に書き上げ、国民的人気ドラマシリーズ「北の国から」の杉田成道監督が映像化した。大石内蔵助から密命を受け、ただひたすら身を隠し忠義を果たす男、瀬尾孫左衛門役に『バベル』の役所広司。一方、討入りに参加し、その後諸国に散った赤穂浪士の遺族たちを援助するという使命を受けた、寺坂吉右衛門役に『アマルフィ 女神の報酬』の佐藤浩市。物語の要所要所に差し挟まれる人形浄瑠璃や、京都や滋賀など日本各地で撮影された自然の風景も美しい。 討入りから16年間、名誉の死を許されなかった寺坂吉右衛門(佐藤浩市)と瀬尾孫左衛門(役所広司)。二人は、それぞれの使命を果たすためだけに懸命に生きてきた。吉右衛門は赤穂浪士の遺族を捜して全国を渡り歩き、ついに最後の一人にたどり着く。孫左衛門は武士の身分までも捨て素性を隠し、可音(桜庭ななみ)と名付けた内蔵助の忘れ形見を密かに育てあげる。やがて凛とした気品を備えた美しい娘に成長した可音は、天下の豪商の嫡男に見初められる。可音を名家に嫁がせれば、孫左衛門の使命もまた、終わるのだ。そんななか、かつては厚い友情で結ばれ、主君のために命を捧げようと誓い合った二人が再会する…。 |
『最後の忠臣蔵』
・発売日:発売中・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ ・価格:¥3,480 (税込) ©2010「最後の忠臣蔵」製作委員会 |