親子の関係は不思議だ。相手に腹を立てることがあったとしても、親子という繋がりだけで許しあえたり、再びサポートしたりできるようになる。映画『さや侍』は戦うことをやめて刀を捨てた侍と、そんな父親をふがいなく思いながらも支え続ける一人娘を通し、親子の普遍的な愛情を描いた作品だ。 |
あることをきっかけに刀の鞘だけを持つようになった侍、野見勘十郎。無断で脱藩したためにお尋ね者となった彼は、娘のたえを連れ、あてのない旅を続けていた。逃げるばかりの父親に苛立ちを感じるたえ。結局、野見は多幸藩の追っ手に捕らえられ、「三十日の業」を課せられる。しかしこれは、母親を亡くして笑顔を忘れた多幸藩の若君を30日以内に笑わせられれば無罪放免、失敗すれば切腹という難業だった…。お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が監督を務めたこの作品は、主役に一般男性の野見隆明を抜てき。クライマックスに見せる、彼の迫真の演技は大きな見どころだ。 |
この作品のロケは茨城県内で実施。野見が森の中を逃げるシーンは、那珂市にある県民の森で撮影された。1968年に造られたこの場所では、アカマツの自然林の中を散策しながら四季折々の植物や鳥の声を楽しむことができる。また、毎月第1・第3日曜日には、自然観察会や体験教室などの「自然体験ツアー」を開催。森林や植物、ここに住む生き物について楽しみながら学べる内容になっている。詳細は、県民の森と隣接する茨城県植物園のホームページに随時掲載されるので、チェックしてみよう。 |
それから、城下町のシーンのロケは、つくばみらい市のワープステーション江戸で行われた。ここは戦国時代から昭和初期を網羅できるロケ施設だが、広く一般にも公開。時代劇はもちろん、バラエティ番組やCMの撮影にも使われており、運が良ければそうした現場に遭遇できるかもしれない。また、同じ敷地内にはつくばみらい市立歴史館、この近くには間宮林蔵記念館などがあるため、歴史についてさらに知識を深めることもできる。
5月は母の日、そして今月第3日曜日は父の日。この機会に、理屈では説明できない親子のつながりを再確認する旅をしてみてはいかがだろう。 |
|
|||||||||
監督:松本人志 『大日本人』『しんぼる』に続く松本人志監督の長編3作目。侍でありながら鞘しか持たない父と、その不甲斐なさに反発する娘の姿を描く。出演は、TV「働くおっさん劇場」に出演していた一般男性・野見隆明、『僕の初恋をキミに捧ぐ』『パラダイス・キス』の熊田聖亜、『空気人形』『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』の板尾創路、『アウトレイジ』『学校をつくろう』の柄本時生。一般人である野見が、プロの俳優には出せない滑稽さと悲哀、そして独特の存在感で、作品に大きなアクセントを与えている。 とあることがきっかけで、自ら侍として戦うことを拒絶し、刀を捨てた野見勘十郎(野見隆明)。そんな父を軽蔑し反発する娘たえ(熊田聖亜)。二人は行くあてもない流浪の旅を続けていた。無断で脱藩した罪に問われていた勘十郎には懸賞金が掛けられていた。次第に追い詰められた勘十郎は遂に捕らわれるのだが、捕まった藩の殿様は相当な変わり者として世に名を馳せていた。殿様の眼前に連行された勘十郎は、"30日の業"に処されるが、成功すると無罪放免になると言う。それが出来なければ…。 |
『さや侍』
・発売日:発売中・発売元・販売元:よしもとアール・アンド・シー ・価格:¥3,990 (税込) ©2011「さや侍」製作委員会 |