いつも同じ仲間たちと会い、同じように働き、同じように暮らす。そんな安定した生活も悪くはないが、時には刺激も必要なもの。思いがけない出会いから新たな世界が広がることもある。映画『キツツキと雨』は、山間の村に住む木こりの男と若い映画監督の出会いから生まれた、人々の不思議なつながりを描いた作品だ。 |
克彦は山間の村で木を伐採する、木こりとして働いている。ある日、山へ向かう途中で、彼は溝にはまって立ち往生する車を発見。その車に乗っていたのは、映画の撮影にやってきた監督の幸一と助監督だった。結局、2人を撮影現場に連れて行くことになった克彦だったが、到着するとエキストラとして参加することになり、それがきっかけで撮影の手伝いまでするようになっていく…。克彦を演じるのは役所広司、幸一役は小栗旬。監督は『南極料理人』の沖田修一である。 |
克彦が住む村は、映画では「栗沢村」という名前で登場するが、これは架空の地名。栗沢村のシーンは、主に岐阜県南東部の東濃エリアで撮影が行われた。克彦がエキストラ出演したラッシュを見る公民館は、明治時代に建てられた芝居小屋・常盤座。中津川市の指定重要文化財にもなっているこの建物は、地元で盛んに行われていた歌舞伎を上演するために建てられた。現在も、毎年3月には「常盤座歌舞伎保存会定期公演」を開催しており、ほかにもコンサートや寄席などが行われている。 |
それから、克彦が東京に戻るという幸一を送り届けた駅は、明知鉄道の岩村駅。この駅は「中部の駅100選」に選ばれたこともある。また、岩村駅を通る明知鉄道ではさまざまな取り組みが行われており、そのひとつが旬の料理を振舞う「グルメ列車」の運行。12月には「じねんじょ列車」がスタートする。来年3月までの月曜日を除く毎日運行しているので、のどかな田園風景を楽しみながら料理に舌鼓を打つのもいいだろう。なお、沿線にはラストシーンの舞台となった、東濃牧場もある。 『キツツキと雨』の克彦のように、地元に来た人との出会いもいいが、自ら外に出て出会いを探すのも楽しいもの。人だけでなく、土地や名所との出会いから何かが生まれることもあるかもしれない。 |
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監督:沖田修一 のどかな山村に、ある日突然やってきたゾンビ映画の撮影隊。ひょんなことからその撮影を手伝うことになってしまった無骨な木こりと、気弱さ故に人生の迷子になりかけている新人監督との心の交流を『南極料理人』の沖田修一監督が暖かく描いた。主演は本作で初共演を果たした『わが母の記』の役所広司と『宇宙兄弟』の小栗旬。脇を固める『ノルウェイの森』の高良健吾や『色即ぜねれいしょん』の臼田あさ美などのコミカルな演技にも注目したい。 人里離れた山村に住む木こりの岸克彦(役所広司)は、妻に先立たれて今は息子の浩一(高良健吾)と2人暮らし。ある朝、車が溝にはまって立ち往生している新人映画監督の田辺幸一(小栗旬)と助監督を発見し、なりゆきで撮影現場まで送っていくことに。そのまま彼らが撮影しているゾンビ映画にエキストラ出演させられてしまう克彦だったが、それをきっかけに徐々に幸一と心を通わしていく。やがて撮影隊と村人たちとの間にも不思議な一体感が生まれはじめ…。 |
『キツツキと雨 通常版DVD』
・発売日:発売中・発売元・販売元:角川書店 ・価格:¥4,935 (税込) ©2011「キツツキと雨」製作委員会 |