夫婦の愛の形はそれぞれに違っており、二人にとっては究極の姿であっても、他人にはそう映らない場合もある。映画『死にゆく妻との旅路』は、実際に起きたある夫婦の旅路を描いた作品で、原作は夫がまとめた同名手記。9カ月にもおよぶあてのない旅は、彼らにとって最も濃密な時間だった。 |
縫製工場を営んでいた清水久典は、自身の工場の経営状態の悪化と知人の連帯保証人になっていたことで多額の借金を抱えていた。妻のひとみはガンの手術を受けて入院中だったが、久典は突然姿を消してしまう。3カ月後、ひとみが身を寄せる娘夫婦の家に現れた彼。残された道は自己破産しかなかったが、まだ何とかなるという気持ちから再び職を求めて1人で旅に出ようとする。しかし、ひとみは一緒に行くと懇願。ここから二人の最後の旅が始まるのだった…。夫婦役を演じたのは、三浦友和と石田ゆり子。監督は『初恋』の塙幸成で、2011年に公開された。 |
映画は実際に清水夫婦が巡った土地でも撮影されており、そのひとつが鳥取砂丘。鳥取県東部の日本海沿岸にあり、その大きさは東西16キロ、南北2キロにもおよぶ。広大な砂丘ではパラグライダーを楽しんだり、遊覧馬車やらくだに乗って見て回ったりすることができる。5〜6月にはハマヒルガオの愛らしい花がみられ、11月上旬までは赤紫色に咲いたラッキョウの花に覆われる。冬になると、一面雪景色の砂丘も見られる。世界ジオパークにも加盟認定されている独特の地形や地質を、さまざまな形で堪能してみよう。 |
さらに鳥取砂丘は芸術とも結びついており、「砂の美術館」では砂が素材の彫刻作品・砂像を展示。世界各国から砂像彫刻家を招き、ハイレベルな作品が展示されている。また、鳥取砂丘で多くの写真を撮影した写真家・植田正治の作品を展示する「植田正治写真美術館」もぜひ足を運びたいスポットのひとつ。福山雅治など多くのアーティストにも影響を与えてきた植田の作品に触れると、砂丘の見え方が変わるかもしれない。
『死にゆく妻との旅路』の清水夫妻の旅は、各地をじっくり楽しむことはできなかったが、二人にとって特別な思い出となった。鳥取砂丘は訪れるすべての人にさまざまな姿を見せ、たくさんの思い出を残してくれるだろう。 |
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監督:塙幸成 『9カ月もの間、末期ガンの妻とともに日本全国を旅して、保護責任者遺棄致死の罪状で逮捕された清水久典氏が事件の裏側について綴った手記を映画化。2000年に月刊誌「新潮45」に掲載されたこの手記は大きな反響を呼び、文庫化されてロングセラーとなっている。監督を務めるのは『ワイルドライフ 国境なき獣医師団R.E.D.』の塙幸成。絶望的な状況の中でも深い絆で結ばれた夫婦を演じるのは、『おかえり、はやぶさ』『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』の三浦友和と、『誰も守ってくれない』『おとうと』の石田ゆり子。 石川県で小さな縫製工場を営んでいた清水久典(三浦友和)は、結婚して20数年、平凡な家庭を築いていた。しかし、バブルの崩壊とともに工場経営が悪化、知人の連帯保証人になっていたことで多額の借金を抱えてしまう。大腸ガンの手術をしたばかりの妻・ひとみ(石田ゆり子)を娘夫婦のアパートに残して、久典は突然姿を消してしまう。3カ月後、ようやくひとみの元に帰ってきた久典だったが、金策も職探しも成果はなしだった。自己破産を迫られる久典だったが、そんな夫に対して「好きにしたらええ」と微笑むひとみ。なけなしの50万円を手に娘のアパートを出た夫婦の無計画な旅はこうして始まった。 |
『死にゆく妻との旅路』
・発売日:発売中・発売元:CHANCE IN ・販売元:TCエンタテインメント ・価格:¥3,990 (税込) ©2011「死にゆく妻との旅路」製作委員会 |