「愛する人を命がけで守る」…言葉にするのは簡単だが、実際、行動に移すとなるとさまざまな困難に直面する。映画『壬生義士伝』は、まさに命をかけて愛する家族を守った、名もなき新撰組の武士が主人公の時代劇である。 |
南部藩の武士・吉村貫一郎は、その学才と剣術の腕を買われ、下級武士にもかかわらず、藩校の教壇に立っていた。そうして武士の面目を保ち、家族も幸せそうに見えていたが、生活は困窮していた。そこに3人目の子供が生まれることがわかり、家族の生活を楽にするために吉村は脱藩の道を選ぶ。そして新選組に入り、稼いだ金を家族に送ってやるのだった…。主演は中井貴一、監督は『おくりびと』や『天地明察』の滝田洋二郎。また、新撰組で共に戦った斎藤一を佐藤浩市が演じている。 |
物語の舞台となったのは岩手県盛岡市。藩校で吉村が子供たちに講義をするシーンではさまざまな山の名前や映像が登場するが、桜の木と共に映し出されていたのが岩手山である。岩手山は標高2,038メートル。「南部富士」「巖鷲(がんじゅ)山」などの呼び名があり、地元の人に愛され続けてきた山だ。山の北東の山腹には、黒く固まった溶岩が積み重なる国の特別天然記念物「焼走り熔岩流」がある。これは1719年に噴火した際にできたもので、長さ3km、幅1.5kmもある。山頂付近にはコマクサの群生地や、そのほかの高山植物が人々の目を楽しませてくれる。 |
その岩手山を背景に桜の木がある場所が「小岩井農場」。小岩井農場の「一本桜」として、毎年、春になると県内外から多くの人たちがこの光景を目当てに訪れる。桜はこの一帯がまだ放牧地だった100年ほど前に、夏の暑さから牛を守るために植えられたといわれている。また、小岩井農場には「まきば園」という動物や自然と触れ合える場所のほか、同農場の歴史や園内に9つある国の有形文化財などが見られるガイド付きバスツアーもあり、子供から大人まで楽しめる観光スポットだ。 名もなき下級武士が、命がけで家族を守った『壬生義士伝』。吉村が斎藤にお国自慢をするシーンを思い出しながら各地を巡れば、彼の故郷を大切に思う気持ちが分かることだろう。 |
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監督:滝田洋二郎 荒れる幕末を己の正義で生き抜き、"壬生の狼"と恐れられた新撰組隊士・吉村貫一郎の物語を描いた時代劇。原作は「鉄道員」で直木賞を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ作家・浅田次郎の同名小説。音楽は、宮崎駿監督作品を数多く手掛けていることでも知られる、映画音楽界の名手・久石譲が担当。主演は中井貴一。そのほか佐藤浩市や中谷美紀など、日本映画界が誇る豪華な顔ぶれが揃った。監督は第81回米国アカデミー賞で日本映画初の外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の滝田洋二郎。 幕末の混乱期。尊皇攘夷の名のもとに、京都府中守護の名目で結成された新撰組に吉村貫一郎(中井貴一)という男がいた。盛岡の南部藩を脱藩して新撰組隊士となった吉村は、時勢に翻弄される隊士たちのなかで、ただ一人、異彩を放っていた。彼には生き残りたいという強い意志があり、戦いは金銭を得るためであった。すべては故郷に残した妻と子供たちを守るため。やがて、彼を「守銭奴」とさげすんでいた隊士たちも気付きはじめる。吉村が、大義名分、権力、名誉などにとらわれず、友や仲間、心を通わせた相手のために生きていることを――。 |
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『壬生義士伝』
・発売日:発売中・発売元:松竹/株式会社電通 ・販売元:松竹 ・価格:¥4,700円+税 © 2003 松竹/テレビ東京・テレビ大阪/電通/衛星劇場/TSUTAYAグループ/IBC岩手放送 |