「あのとき、こうしておけばよかった…」。事の大小はともあれ、過去の出来事を悔やむことは誰にでもある。しかし、それがトラウマになると話は別だ。『くちびるに歌を』はある理由で音楽の世界から身を引いた元ピアニストが、合唱部に所属する中学生との交流を通して変わっていく姿を描いた作品だ。 |
長崎の離島にある中学校に、産休に入った音楽教師の代理としてやってきた柏木ユリ。東京でピアニストとして活躍していたと聞き生徒たちは興奮していたが、ユリはとても冷淡。合唱部の顧問にもかかわらず、ピアノを弾こうともしない。それどころか、今まで女子だけだった部に男子を入れ、混声合唱をやると言いだす。そんな、横暴で身勝手にも見えるユリだったが、実は心に大きな傷を抱えていた…。主演は新垣結衣。原作は、アンジェラ・アキが五島列島の中学を訪ねたテレビ番組を元に、中田永一が書きおろした同名小説である。 |
ロケは五島列島を中心に行われた。そのひとつが五島の町を見下ろすことのできる「鬼岳」だ。鬼岳は火岳、城岳、箕岳、臼岳と共に鬼岳火山群を成す火山のひとつ。鬼岳中腹にはリゾートホテルがあり、天然温泉を楽しむこともできる。鬼岳の温泉は、空気に触れると鉄分が酸化して湯が赤くなる特徴があるとのこと。褐色の露天風呂は身体が温まり、神経痛や疲労回復、冷え性などの効能があるそうだ。 |
また、五島は島内に50カ所にも及ぶ教会堂がある。これらは江戸時代、キリスト教徒への弾圧が続くなか、信仰を貫いた人たちによって禁教が解かれたのちに建てられたという。「堂崎教会」は1907(明治40)年に建立。堂崎には江戸時代から熱心な信徒が多く、キリスト教の信仰が許されると、堂崎の浜辺では五島で初めてとなるクリスマスが外国人神父によってささげられたそうだ。 作品に映し出される美しい五島の風景は、信心深い人が住む場所ということもあってか、心の傷を癒してくれるようにも見える。ゆったりと休みたい時に訪れたい場所だ。 |
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監督:三木孝浩 アンジェラ・アキの「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」が課題曲となる合唱コンクールに出場する五島・若松島の中学生たちを追ったテレビドキュメンタリーをヒントに、中田永一が書き下ろした同名小説が原作。2012年の小学館児童出版文化賞を受賞、同年の本屋大賞にもノミネートされた。青い海と緑の木々に囲まれた小さな島、長崎県・五島列島の中学の合唱部に東京からやってきた心に傷を抱えた教師と、生徒たちの姿を描く感動ストーリー。主人公の柏木ユリを、幅広い世代から人気を誇る新垣結衣が演じる。合唱部の生徒たちはオーディションで選出され、半年間におよぶ合唱練習を経て長崎での撮影合宿に臨んだ。監督は、『陽だまりの彼女』『ホットロード』などの青春映画のヒット作を世に送り出す三木孝浩。 長崎県の五島列島にある中学校へ、臨時教師として帰郷した柏木ユリ(新垣結衣)。東京で活躍していたピアニストだという噂が広まるが、柏木はなぜか浮かない顔。合唱部の顧問を渋々引き受けることになったが、そっけない態度で部員を戸惑わせる。今年のコンクール課題曲は、「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」。柏木は、歌詞の理解を深めるためにと、"15年後の自分へ手紙を書く"という宿題を出す。それぞれに苦悩を抱える部員たちと、自身もまた傷ついてきた柏木は、練習を重ねながら次第に心を通わせていく。待ちに待ったコンクール当日、ある事件を告げる一本の電話によって、柏木と部員たちの心は乱れる。しかし、最初で最後のステージの幕は上がろうとしていた。 |
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『くちびるに歌を【通常版】』
・発売日:DVD発売中・発売元:アスミック・エース/小学館 ・販売元:ポニーキャニオン ・価格:¥3,800円+税 © 2015『くちびるに歌を』製作委員会 © 2011中田永一/小学館 |