毎日の生活が単調でつまらない、何かそれを打破する刺激が欲しい。それは旅かもしれないし、新たな挑戦かもしれない。あるいは出会い、ということもあるだろう。三島由紀夫原作の映画『春の雪』は、ある青年の淡々とした日々から抜け出したいという思いから始まった恋物語だ。 |
時は明治。貴族の家に生まれた松枝清顕は、幼いころから何不自由のない生活を送り、青年へと成長していった。彼にとって初恋の人は、姉弟のように育った綾倉聡子。そして聡子は、清顕が思う以上に彼のことを慕っていたが、聡子は皇族の婚約者となる。なさぬ仲となった2人だったが、その後、ひそかに逢瀬を重ねる…清顕を妻夫木聡、聡子を竹内結子が演じ、行定勲監督がメガホンをとった。 |
聡子の大伯母が尼僧を務める月修寺の撮影は、奈良市の圓照寺で行われた。本堂はかやぶき屋根で、庭園と合わせて趣のある風景を見せている。ほかにも境内には奥御殿、葉帰庵といった建物が並び、奥御殿の庭園は江戸時代に作られた枯山水で、静かなたたずまいを感じさせる。しかし残念ながら、圓照寺を拝観することはできない。それでも原作者の三島由紀夫が取材に行ったという、圓照寺の雰囲気を感じ取りに山門まで足を運んでもいいだろう。 |
また、歴史ある奈良では世界遺産を見るのも楽しいが、そのひとつ、元興寺の旧境内を中心とした通称「ならまち」も注目のエリアだ。もともと宿場町だった奈良町だが、80年代に新たな町づくりが行われた。外観には古きよき日本を残しながら、現代にマッチしたカフェや雑貨店と昔ながらの和菓子店や漢方薬局などが同居し、再び多くの人が訪れる場所となっている。 『春の雪』は物悲しくも美しい物語だ。ロケ地のひとつとなった奈良は、長く重要な歴史に彩られた場所。そしてこの地には、現代に至るまで人々のさまざまな想いが埋まっているに違いない。歴史ある場所を巡りながら、清顕と聡子の恋のようなきらめきを感じる旅をしてみよう。 |
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監督:行定 勲 原作は、三島由紀夫の遺作となった「豊饒の海」4部作の第1章「春の雪」。三島由紀夫文学の中でも最高のラブストーリーと賞賛され、これまで日本はもとより海外からも映画化のオファーが殺到しながら実現することのなかった名作を、『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』などの行定勲監督が映画化。舞台は大正初期の貴族社会。侯爵家の若き嫡男・清顕と、幼なじみで宮家に嫁ぐことが決まった伯爵家の美しき令嬢・聡子との悲劇的な運命を描いた美しき純愛ロマン。運命に逆らうことで真実の愛をつかもうと試みる清顕を演じるのは、『悪人』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得した妻夫木聡。運命を受け入れることで純潔の愛を貫く聡子を、『いま、会いにゆきます』の竹内結子が演じる。 幼なじみである侯爵家の子息・松枝清顕(妻夫木聡)と、伯爵家の令嬢・綾倉聡子(竹内結子)。いつからか聡子は清顕を恋い慕うようになるが、そのころ綾倉家では宮家の王子と聡子の縁談が進められていた。没落寸前の綾倉家にとっては家名復興のまたとない機会。清顕の気持ちを必死に確かめようとする聡子だったが、あるすれ違いにより突き放したような態度をとる清顕。失望した聡子は、ついにこの縁談を受けてしまう。しかし清顕は、聡子がもはや自分のものにはならないことを知ったとき、はじめて彼女への愛の深さを自覚する。一度は清顕への想いをあきらめた聡子も、次第に彼の愛を受け入れ、2人は人目を忍んで密会を重ねるように。そして、清顕と聡子にとっての悲劇の幕開けともいえる、"ある事件"が迫っていた。 |
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『春の雪(2枚組)』
・発売日:発売中・発売元:フジテレビジョン ・販売元:東宝 ・価格:¥4,800円+税 © 2005「春の雪」製作委員会 |