身近な存在のなかで、一番分かっているようで実は知らないことも多いのが、「家族」という存在かもしれない。他人にしか見せない顔もあるだろうし、面と向かって伝えるには照れくさい思いを秘めていたりすることも少なくない。『四十九日のレシピ』は、亡くなった母の知らなかった姿に触れ、改めて人生を歩み出す父と娘の物語だ。 |
夫との間に子供ができず、その上、夫の不倫相手が妊娠したことを知った百合子。母を亡くしたばかりの彼女は精神的に追い込まれ、父・良平が暮らす実家に戻る。しかしそこには、父だけでなく見知らぬ若い女性が。「イモ」と名乗るその女性は仕事で知り合った母から、四十九日の準備を頼まれたという―。監督はこの10月公開の『お父さんと伊藤さん』でもメガホンを取ったタナダユキ。百合子役には永作博美、良平を石橋蓮司、イモを二階堂ふみが演じている。 |
作品のロケは、ほぼ岐阜県内で行われた。なかでもメインとなった百合子の実家や、何度か出てくる河原のシーンは、県南東部の瑞浪市で撮影された。登場人物たちの心象風景を表すように静かに流れる川は土岐川といい、岐阜から愛知、そして伊勢湾へと続いている。瑞浪市では土岐川沿いの堤防に桜を植えており、春はたくさんの人が花見に訪れるそうだ。遊歩道があって、野鳥も多く生息していることから、四季を通じて市民に親しまれている。 |
また瑞浪からは化石が出土したり、市の北部の旧中山道にはところどころに石畳や一里塚が残っていたりと、歴史を感じられる町でもある。11月には紅葉を楽しみながら歩く、「中山道往来〜なかせんどううぉーく〜」というイベントも行われているそうだ。かつての面影が最も多く残る細久手宿から隣町・御嵩町の御嶽宿まで、約12キロを江戸時代に生きた人たちの気分で歩いてみてもよいだろう。 改めて家族と話す機会を持つのは、ちょっと気恥ずかしい。でも、旅先という特別な環境の中なら、わざわざ言葉を交わさなくてもお互いの知らない一面に遭遇できるかもしれない。 |
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監督:タナダユキ 原作は、累計35万部を突破した伊吹有喜の同名小説。NHKドラマとしても放映された本作を映画化したのは、『百万円と苦虫女』や『ふがいない僕は空を見た』など独自の視点で話題作を手掛けるタナダユキ監督。母が亡くなり四十九日までの間、離れ離れになっていた家族が再び集い、母が残したあるレシピによってそれぞれ心の傷と向き合いながら再生していく姿を描く。主演の百合子を演じるのは『八日目の蝉』など、多数の作品で高い評価を得ている永作博美。百合子の父親を石橋蓮司が演じる。また、母が残したレシピを伝える不思議な少女イモを演じるのは二階堂ふみ。その他、原田泰造や岡田将生らが脇を固める。 ある日、突然この世を去ってしまった熱田家の母・乙美。夫の良平(石橋蓮司)は何一つ感謝を伝えられず、悩める娘・百合子(永作博美)は、女として今こそ聞きたいことがあったのに、母はもういない。そんな折、熱田家に派手な服装の少女イモ(二階堂ふみ)と日系ブラジル人の青年ハル(岡田将生)が、生前の乙美に頼まれたという、ある「レシピ」を持って現れる。それは、“自分がいなくなっても残された家族がちゃんと毎日暮らしていけるように”と乙美がイラスト付きで書き残した、家事にまつわる知恵や健康に関するアドバイスが詰まった「暮らしのレシピカード」だった。その中の1ページに“自分の四十九日には大宴会をしてほしい”という、生前の乙美の希望を見つけた父と娘。こうしてイモ、ハルを加えた4人による“四十九日の大宴会”までの奇妙な共同生活が始まる。 |
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『四十九日のレシピ』
・発売日:発売中・発売・販売元:ポニーキャニオン ・価格:¥4,500円+税 © 2013「四十九日のレシピ」製作委員会 |