ある日突然、一切の電気が止まってしまったら―。2017年に公開された映画『サバイバルファミリー』は、停電により都市としての機能を失った東京から脱出を試みようとする家族の物語。作中では、宮城県仙台市の街並みが、都市を象徴するロケ地として選ばれた。もとより見どころの多い同エリアだが、あえて注目したいのは、第3回国連防災世界会議の成果文書「仙台防災枠組」に「仙台」が採用されたこと。東日本大震災の教訓がどのように生かされたのか、改めて「杜の都」を追ってみよう。 |
「杜の都」を象徴する景観といえば、青葉区にある「定禅寺通」が定番。市内随一のショッピングストリートでありながらも、頭上を覆い尽くすほどのケヤキ並木が、市民に憩いの場を提供している。仙台市がユニークなのは、こうした緑を「都市のインフラ」に位置付けていること。“にぎわい創出”はもちろんのこと、防災や環境保全としての役割も含まれるため、仮に建物や高速道路の倒壊などが起きても、ライフラインとして機能し続けるだろう。 |
さて、せっかく青葉区にいるなら、“青葉城”の別名を持つ「仙台城跡」にも足を延ばしたいところ。本丸北西の石垣は、全長約200メートルにもなるが、そのうちの約60メートルが東日本大震災によって崩落した。その一つ一つの石を、約2年の歳月をかけて元の姿へと積み直したのだとか。眼下には、歌謡曲「青葉城恋唄」でおなじみ、広瀬川の雄姿が広がる。この広瀬川は下流で名取川と名前を変え、かつてはシジミ漁が行われていたそう。その原風景を現代へよみがえらせたのが、皮肉にも津波による土壌の耕起だった。しかし、水害だけに終わらせず水利ももたらすよう時は巡る―。 |
そんな震災復興の歩みを学べるのが、若林区に位置する「せんだい3.11メモリアル交流館」。過去の出来事を現代の知恵で乗り越え、将来の教訓へと結び付けるコミュニケーションの場だ。新たな国際的防災指針「仙台防災枠組」のお膝元で、『サバイバルファミリー』の二の舞にならないような、有事へのヒントを得てみてはいかがだろう。 |
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監督:矢口史靖 『ウォーターボーイズ』『ハッピーフライト』などの矢口史靖監督によるオリジナル作品。「もし、電気がなくなったら」という独自の視点で選んだ題材をもとに、1つの家族が繰り広げる究極のサバイバルを描く。主人公・鈴木義之を演じるのは、『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』以来、久々の矢口作品参加となる小日向文世。専業主婦のお母さん・光恵には、シリアスからコメディーまで、抜群の演技力で演じ分ける、深津絵里。鈴木家とは対照的なアウトドア一家・斎藤家を時任三郎、藤原紀香、大野拓朗、志尊淳らが演じる。その他にも、渡辺えり、柄本明など矢口作品常連俳優や、大地康雄、宅麻伸など、個性的な豪華俳優陣が脇を固める。 東京に暮らす平凡な一家・鈴木家。さえないお父さん(小日向文世)、天然ボケなお母さん(深津絵里)、無口な息子(泉澤祐希)、“スマホがすべて”の娘(葵わかな)。そんな鈴木家にある朝、突然、緊急事態が発生する。テレビや冷蔵庫といった電化製品ばかりか、電車、自動車、ガス、水道、乾電池に至るまで電気を必要とするすべてのものが完全にストップしてしまったのだ。ただの停電かと思っていたが、一週間経っても電気は戻らない…。情報も絶たれた絶望の中、父が「東京から脱出する」という、一世一代の大決断を下す。家族を待ち受けていたのは、減っていく食料、慣れない野宿―。一家は時にぶつかり合いながらも、必死で前へと進むが、さらなる困難が次々と襲い掛かる。 |
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『サバイバルファミリー』スタンダード・エディション
・発売日:発売中・発売元:フジテレビジョン ・販売元:ポニーキャニオン ・価格:¥3,800+税 (Blu-ray) ©2017フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ |