怠惰な生活から抜け切れない十和子は、陣治と同居を続けながらも、他の男性とのトラブルに巻き込まれていく。十和子の男性への感情が殺意に変わったとき、陣治は意外な行動を見せる―。2017年に封切りされた映画『彼女がその名を知らない鳥たち』のロケは、沼田まほかるの原作と同様、大阪府を中心とした関西エリアで行われた。大阪といえば難読駅名で有名。今回は映画にちなみ、鳥に絞った難読駅を訪れてみよう。 |
トップバッターは、JR西日本学研都市線とOsaka Metro今里筋線が乗り入れしている「鴫野駅(しぎのえき)」。長いクチバシが特徴的な「シギ」は、干潟や川べりなどで多く見られる。鴫野駅近辺では、実際に映画のロケも行われた。また、駅から北に歩けば、かつて大阪の大動脈であった「寝屋川」へ至り、「巡航船の船着き場跡」などの見どころが点在。城東のリバーサイドを、シギになった気持ちで散策してみるのもいいだろう。 |
次に紹介したいのは、JR西日本阪和線の「百舌鳥駅(もずえき)」。一見スズメにも似た「モズ」は、大阪府の鳥に指定されており、獲物を木の枝などに刺す「はやにえ」という習性で知られている。ちなみにこの「にえ」とは、もともと天皇にささげる食べ物のこと。そう考えると、百舌鳥駅が「仁徳天皇陵古墳」の最寄り駅である事実に、偶然以上の何かを感じる。古くから続く和暦が改元されようとしている今、モズたちは、誰のために「にえ」をささげているのか。 |
最後は、阪急電鉄宝塚線の「雲雀丘花屋敷駅(ひばりがおかはなやしきえき)」。頭上に冠のような羽のある「ヒバリ」は、鳴き声の美しいことで親しまれている。中でも、雄が高く舞いながらさえずる「揚げヒバリ」は、春の風物詩に数えられる。実は、自分のすみかを宣言する縄張り行動であるらしい。そんな雲雀丘花屋敷駅の北側には、大正時代に建てられた洋館「旧諏訪邸(高崎記念館)」を筆頭とした、高級住宅地が展開している。駅名の裏に、その実あり。観光もよいが、たまにはこんな旅も楽しいだろう。 |
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監督:白石和彌 「共感度0%、不快度100%」と評される沼田まほかるの同名ミステリー小説を、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』など骨太なサスペンスで高い評価を得た白石和彌監督が映画化。嫌な女・十和子、下劣な男・陣治、ゲスな男・水島、クズすぎる男・黒崎を、蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊がそれぞれ演じる。 15歳年上の陣治(阿部サダヲ)と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎(竹野内豊)のことが忘れられずにいる女・十和子(蒼井優)。不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って、働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。ある日、十和子はどこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島(松坂桃李)と出会う。彼と不倫の情事に溺れる十和子だが、黒崎が行方不明であることを知る。どれほど罵倒されても「十和子のためなら何でもできる!」と言い続ける陣治が自分を尾行していることを知った十和子は、黒崎の失踪に陣治が関与していると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかとおびえ始める―。 |
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『彼女がその名を知らない鳥たち 特別版』
・発売日:発売中・発売元:クロックワークス ・販売元:松竹 ・価格:¥5,800+税 ©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会 |