新米刑事、日岡(松坂桃李)の赴任先は、暴力団対策法成立直前の広島県だった。彼は、手段を選ばない破天荒な“一匹おおかみ”大上(役所広司)刑事の下で、理想から現実に目覚めていく―。2018年に公開された映画『孤狼の血』は、柚月裕子著の同名小説を元に制作された。その撮影は主に広島県呉市で行われ、詳しい「ロケ地マップ」が呉観光協会の公式サイトに掲載されている。果たして現在の呉市は、どのような魅力であふれているのだろう。 |
呉市と聞いてまず思い浮かぶのは、孤軍奮闘のイメージが強い「戦艦大和」ではないだろうか。当時の最新鋭艦といえども、少ない護衛部隊では戦いきれなかったようだ。そんな雄姿を10分の1スケールで再現しているのが、「呉市海事歴史科学館」(通称・大和ミュージアム)。もちろん、造船や製鋼に関連した「海軍工廠のまち」としての歴史も体験可能だ。また、「呉湾艦船めぐり」などのツアーで、現役の艦船と比較しても面白い。 |
呉市の中心的な繁華街といえば、楓橋(かえでばし)付近の蔵本通りや中通商店街などが挙げられる。場所の目印となるのは、映画の中でも登場した、あの「黄ビル」だ。散策のお供には、アンドーナツにも似たご当地名物「フライケーキ」をお忘れなく。また、日が暮れるにつれて集結してくる個性豊かな屋台も、外すことのできないご当地グルメだろう。定番のラーメンから創作料理まで、個々の集まりが魅力を添える。 |
夜景を楽しみたいなら、呉駅のほぼ正面に位置する「灰ヶ峰」はいかがだろうか。大上刑事が密談を交わしたシーンは、ここで撮影された。なお、峰の頂上に見える白い球体の正体は、気象レーダーなのだという。同じようなレーダーを全国に配置することで、広範囲の推移が見て取れるし、予想も立てやすくなる。 時代は「強大な個」より「個の集まり」を求めるようになった。そんなことに気付かされた呉市で、むしろ、その反動ともいえる一匹おおかみがフォーカスされたとしたら奇縁である。大上の見え切りは、果たして警察組織を離れても響いただろうか。 |
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監督:白石和彌 「警察小説×仁義なき戦い」と評される柚月裕子の同名小説を、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督が映画化。広島の架空都市・呉原を舞台に、やくざとの癒着など黒いうわさが絶えない刑事・大上を演じるのは、日本映画界を代表する俳優、役所広司。大上のやり方に疑問を抱きつつも、徐々に影響を受けていくエリート新人刑事・日岡を松坂桃李が演じる。その他、江口洋介や真木よう子など個性豊かな実力派俳優陣が集結。 昭和63年。暴力団対策法成立直前の広島・呉原。そこは、いまだ暴力団組織が割拠し、新たに進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の「加古村組」と地場の暴力団「尾谷組」との抗争の火種がくすぶり始めていた。そんな中、「加古村組」関連企業の金融会社社員が失踪する。失踪を殺人事件と見た“マル暴”のベテラン刑事・大上(役所広司)と新人刑事・日岡(松坂桃李)は事件解決のために奔走するが、この事件を契機に加古村組と尾谷組の抗争が激化していく。警察組織のもくろみ、大上自身に向けられた黒い疑惑、さまざまな欲望をむき出しにして、暴力団と警察を巻き込んだ“血で血を洗う”報復合戦が起ころうとしていた。 |
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『孤狼の血』
・発売中・発売元:東映ビデオ ・発売元:東映 ・価格:DVD ¥3,800+税 各配信サービスにて配信中。 ※2020年8月時点。 (C)2018「孤狼の血」製作委員会 |