浪人生の満男(吉岡秀隆)は、佐賀県へ転校した及川泉(後藤久美子)を追い、一路バイクの旅へ。すると偶然、満男の“伯父さん”に当たる寅次郎と再会。浪人の身で肩身の狭い思いをする中、数少ない味方となってくれたのだった。果たして、満男と寅さんの恋の行方は−。ご存じ、国民的映画の第42作目となるのが、1989年に公開された「男はつらいよ 僕の伯父さん」だ。満男の存在感が強くなる、いわゆる「ゴクミシリーズ」は、本作から始まる。そのロケの多くは佐賀県で行われたようだ。 |
佐賀県の名所というと、国の特別史跡に指定されている「吉野ヶ里遺跡」が思い浮かぶ。映画の中では、満男と寅さんがバッタリ出会ったシーンに使われ、「役者がそろった感」を演出している。実際に観光する際は、国営吉野ヶ里歴史公園としての見学が可能で、12月31日と、1月の第3月曜日とその翌日は休園日なので要注意。体験プログラムやイベント情報などは、同園の公式サイトを確認しよう。 |
どちらかというと焼酎のイメージがある九州の中で、佐賀県は日本酒の醸造に力を入れている。なぜなら、江戸時代末期の大名、鍋島直正(なべしまなおまさ)公が、日本酒造りを奨励したからだ。その名も「鍋島」という、世界的な評価を受けた逸品も存在しているほど。なお、スクリーンには、泉の下宿先である酒造所の建物群が映っていた。レンガ造りの建物や煙突など、歴史的建築物としての価値も高い。 |
日本酒には原料である米が欠かせない。しかし佐賀平野はかつて、水不足で悩まされていたそうだ。そこで考案されたのが、「クリーク」という灌漑(かんがい)システムである。貯水池の役割だけでなく、船運の水路や防災ダムとしての機能も担っている。そんなクリークは、寅さんら登場人物が水路沿いで会話しているシーンに度々登場し、人の滞留や流れゆくさまを連想させる。 「男はつらいよ」シリーズは、人と現地の「真の姿」を描いているから面白い。寅さんそのものが、「外見よりも中身」を体現しているシンボルともいえるだろう。旅をする上で、参考にできる点は多い。 |
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監督:山田洋次 山田洋次が原作・脚本・監督を手掛けた国民的人情喜劇「男はつらいよ」シリーズ第42作。おいのために恋のコーチを買って出た寅次郎の珍騒動を描く。主演の渥美清をはじめ、寅次郎の異母妹さくら役を倍賞千恵子が、その夫である博役を前田吟が演じるなど、おなじみのキャストが集結。そのほか、マドンナ役を後藤久美子が演じる。 さくら(倍賞千恵子)の一人息子・満男は大学受験に失敗。後輩の美女・泉(後藤久美子)から来た手紙の内容も悩み多い季節である。そんななか寅さん(渥美清)が久しぶりに柴又へ帰ってきた。さくらは兄に満男の悩みを聞いてやってくれと頼むが、寅さんは満男にまず酒の飲み方から教える始末。結局、満男は親子げんかの末、バイクで泉のいる佐賀へと向かってしまう。寅さんもさくら一家と気まずくなり九州へ旅に出る。その後、佐賀の安宿で偶然、出会った寅さんと満男。おいの恋を応援すべく泉の寄宿先を訪ねると、そこには美人の叔母さんがいて寅さんを迎えてくれるのだが―。 |
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『第42作 男はつらいよ ぼくの伯父さん HDリマスター版』
・発売中・発売・販売元:松竹 ・価格:DVD ¥1,800+税 (C)1989 松竹株式会社 |