結果を出せず底辺でくすぶっている芸人・徳永と、強い信念を持った先輩芸人・神谷。漫才にすべてを懸けた売れない芸人2人の、笑いながらもがき倒した10年間の軌跡―。人気お笑い芸人、又吉直樹の芥川賞受賞作を菅田将暉と桐谷健太主演で映画化した『火花』は、夢と現実のはざまで葛藤しながら笑いの世界に向き合う若者たちの青春ドラマだ。劇中では熱海の夏と冬、二つの“花火”が物語に色を添えたが、今回は徳永(菅田)が営業で訪れた山梨県の花火大会にスポットを当ててみたい。 |
花火の美しさで全国的に注目を集めている、市川三郷町の「神明の花火大会」。県下最大級の規模を誇るこの花火大会は、江戸時代に日本三大花火の一つとされた由緒ある大会で、毎年“花火の日”である8月7日に開催されている(2020年は中止)。スターマインと呼ばれる連射連続花火と音楽を合わせたストーリー性のあるプログラムが特徴で、中でも直径500メートルの大輪の花火が開く2尺玉は迫力満点だ。会場である河川敷は観客席が近いので、まるで花火に包まれるかのような感覚を味わえるだろう。 |
原作には「熱海は山が海を囲み、自然との距離が近い地形である。そこに人間が生み出したものの中では傑出した壮大さと美しさを持つ花火である」という表現があるが、世界遺産・富士山を擁する富士五湖の花火大会も見応え満点。富士五湖では毎年8月1日の山中湖「報湖祭」を皮切りに各湖で5日連続、花火大会が開催されており、特に最終日に行われる河口湖「湖上祭」は、打ち上げ数、約1万発と規模も最大。(2020年は全て中止)フィナーレを飾るにふさわしい、大輪の花が夜空を彩る。 |
自分たちの理想の笑いを火種にそれぞれの花を咲かせようともがいた10年後、徳永と神谷が再び見た花火は冬の花火だった。花火=夏の風物詩だが、空気が澄んでいる冬は、花火がよりくっきりと鮮やかに見える。山梨県の冬の花火で有名なのは、「河口湖冬花火」(2021年1月16日〜2月23日まで 期間中、土・日曜日開催)。富士山をバックに約1,800発の花火が冬の夜空を染め上げる光景は、心に染みる美しさだ。湖面が穏やかな時は“逆さ花火”を見ることもできる。 |
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監督:板尾創路 お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹が第153回芥川賞を受賞し、ドラマ化もされた同名小説を、菅田将暉と桐谷健太の主演により映画化。まったく芽が出ない芸人・徳永役を菅田が演じ、先輩芸人・神谷役を桐谷が演じる。さらに、2人を見守る神谷の同棲(せい)相手・真樹役を演じるのは木村文乃。そのほか、お笑いコンビ「2丁拳銃」の川谷修士や、元お笑い芸人の俳優・三浦誠己など、個性豊かな俳優陣が集結。監督は芸人であり俳優や映画監督などとしても幅広く活躍する板尾創路が務める。 まったく芽が出ない芸人・徳永(菅田将暉)は営業先の熱海の花火大会で、常識の枠からはみ出た漫才を披露する芸人に魅せられる。それは先輩芸人・神谷(桐谷健太)だった。徳永は、神谷に弟子入りを志願。「俺の伝記を作ってほしい」という条件で神谷はそれを受け入れる。人間味に溢れ、天才的な奇想の持ち主でもある神谷に引かれる徳永。神谷もそんな徳永に心を開き、2人は毎日のように酒を酌み交わしては芸について議論していた。しかし、そんな2人の間にいつからか、わずかな意識の違いが生まれるようになる。 |
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『火花 スタンダード・エディション』
・発売中・よしもとミュージックエンタテインメント ・販売元:東宝 ・価格:DVD ¥3,800+税 (C)2017「火花」製作委員会 |