1981年『の・ようなもの』で監督デビューして以来、『家族ゲーム』『失楽園』『間宮兄弟』など第一線で活躍してきた森田芳光監督。2012年に発表された『僕達急行 A列車で行こう』は監督の遺作となった作品で、鉄道ファンである若者2人の友情と恋がコミカルに描かれる。監督自身が鉄道好きということもあり、劇中では様々な電車が登場するが、今回は佐賀県の筑肥線沿線のスポットに注目してみよう。 |
佐賀県・唐津市の山本駅から伊万里駅を結ぶJR九州の筑肥線沿線。のどかな風景が広がるこの沿線の始発、山本駅がある唐津は、唐津城が見守る城下町であり、いにしえより大陸との玄関口として栄えてきた街だ。唐津を代表するものといえば、毎年11月2〜4日にかけて行われる唐津神社の秋の例大祭「唐津くんち」だろう。獅子やタイ、かぶとなど豪華絢爛(けんらん)な曳山が街を走る雄姿を見に、毎年50万人が訪れる。曳子たちの「エンヤ!エンヤ!」の掛け声に胸が熱くならずにはいられない。 |
小町(松山ケンイチ)と小玉(永山瑛太)が乗った1両編成の黄色い電車は、キハ125形。田園風景に黄色い電車がよく映える。映画のクライマックスの舞台になった駒鳴(こまなき)駅は、駅舎がない小さな駅だが、ホームからは心が洗われるような雄大な山々や平原の景色が楽しめる。映画公開時には、聖地巡礼としてこの駅を巡るツアーも実施されていた。駅のホームには、本作を紹介するパネルが設置されている。 |
筑肥線の終点は伊万里駅。伊万里といえば、透き通るような白磁に華やかな色絵が特徴の伊万里焼が有名だが、この伊万里駅から車で10分ほどのところにある大川内山は、江戸時代・佐賀藩の御用窯だった当時の雰囲気を体感できる。高度な技術が外部に漏れるのを防いだ関所跡や陶工の家などが再現されているほか、現在も30程度の窯元も軒を連ねている。三方を山に囲まれた山水画のような風景は、まさに「秘窯の里」。器好きならぜひ訪れたいスポットだ。 |
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監督:森田芳光 『間宮兄弟』『武士の家計簿』の森田芳光監督が、鉄道オタクの青年2人を主人公に趣味や仕事、恋愛に精いっぱい生きる姿を描くコメディー・ドラマ。松山ケンイチと瑛太の実力派俳優二人が主演を務める。脇を固めるのは、貫地谷しほり、ピエール瀧、松坂慶子、笹野高史、西岡徳馬、伊武雅刀といったバラエティ豊かな面々。また、本作は劇場公開前の2011年12月20日に他界した森田監督の遺作となった。 のぞみ地所の社員・小町圭(松山ケンイチ)とコダマ鉄工所の二代目・小玉健太(瑛太)は、性格も仕事も異なるが、共に鉄道を愛する者同士。ふとしたきっかけで出会った二人は、すぐに仲良くなる。さらに、会社の転勤で九州支社に行くことになった小町は、のぞみ地所がなかなか口説けない大手企業の社長(ピエール瀧)を担当することになるが、鉄道ファンだったことから意気投合。趣味を通して、思いがけず事態が好転していくのだった。しかし、小町も小玉も、恋のほうは趣味や仕事のようにはうまくいかず…。 |
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『僕達急行 A列車で行こう』
・発売日:Blu-ray発売中・発売・販売元:バンダイナムコフィルムワークス ・価格:¥5,280(税込) (C)2012『僕達急行』製作委員会 |