『半落ち』『陽はまた昇る』など数々の作品を手がけたきた佐々部清監督の遺作となった本作は、鹿児島県薩摩川内市で長きにわたって行われてきた伝統行事「川内大綱引」を題材に、大綱引にかける青年の恋と家族の人間模様を描いた物語だ。舞台となった薩摩川内市の観光スポットを巡りながら、『大綱引の恋』の世界観に触れてみよう。 |
まずは本作の題材となっている「川内大綱引」を押さえておこう。毎年秋分の日の前日(2023年は9月22日)に行われている川内大綱引は、420年以上続く伝統行事。関ヶ原の戦いで島津義弘が士気高揚のために行ったのが起源ともいわれている。長さ365m、重さ7トンの大綱を、“ハダカ”と呼ばれる上半身裸にサラシを巻いた約3,000人の男たちが、勝利をかけて体と体をぶつけ合い、格闘技のような激しい攻防を繰り広げる。映画の撮影では、本物と同じく国道3号線を封鎖して、エキストラ400〜500人が参加。臨場感あふれるシーンとなった。 |
劇中、主人公の青年・武志(三浦貴大)が息をきらして階段を上っていた神社は、ニニギノミコトを祭る新田神社だ。神亀山(しんきんさん)の山頂に鎮座するここは、かつて薩摩国一の宮として呼ばれた由緒ある神社で、樹齢約800年の大楠のご神木や子宝や安産のご利益があるとされる子抱きこま犬が私たちを迎えてくれる。二の鳥居から本殿までは322段の階段があるが、体力に自信がない方は、車で本殿近くまで行くことができるのでどうぞご安心を。 |
全国第2位の島数を誇る鹿児島県は、27の有人離島それぞれに独特の文化が息づいている。薩摩川内市から高速船で約50分で行ける甑島(こしきしま)は、劇中では武志が思いを寄せる韓国人女性研修医のジヒョン(知英)の勤務先として登場した。8000万年前の地層が見られる断崖や奇岩、新鮮な海の幸などダイナミックな自然が楽しめるこの島では、2009年に秋田のナマハゲにも似た伝統行事トシドシが、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。 |
|
|||||||||
監督:佐々部 清 『陽はまた昇る』『半落ち』『ツレがうつになりまして。』『八重子のハミング』など、数々の作品を産み出し、2021年3月に62歳で急逝された名匠・佐々部清監督の渾身(こんしん)のラストストーリー。鹿児島県薩摩川内市に420年続く勇壮な“川内大綱引”に青春をかける鳶(とび)の跡取りと甑島の診療所に勤務する韓国人女性研修医との切ない恋、そしてその二人を取り巻く家族模様を描く。主人公の鳶(とび)の跡取り、武志を三浦貴大、韓国人研修医のジヒョンを知英がそれぞれ演じ、比嘉愛未、石野真子、松本若菜、中村優一、西田聖志郎、朝加真由美、升毅らが顔をそろえた。 鳶(とび)職・有馬組の三代目である有馬武志(三浦貴大)は35歳・独身。鳶(とび)の親方であり“大綱引”の師匠でもある父・寛志(西田聖志郎)から「早う嫁を貰うて、しっかりとした跡継ぎになれ」とうるさく言われていた。仕事柄出会いもなく奥手の武志には特別な女性は居なかったが、ある日ふとした事件から韓国人女性研修医ジヒョン(知英)と出会い、次第に惹かれあうように。その頃、有馬家では母・文子(石野真子)が定年退職を宣言し女将も家事も放棄。妹・敦子(比嘉愛未)も巻き込み家族は大混乱。一方、年に一度の一大行事“大綱引”が迫るなか、武志はジヒョンから「あと2週間で帰国するの」と告げられる―。 |
||
『大綱引の恋』
・発売日:発売中・発売元:中央映画貿易/オデッサ・エンタテインメント ・販売元:オデッサ・エンタテインメント ・価格:¥4,180(税込) (C)2020「大綱引の恋」フィルムパートナーズ |