『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久監督が、沢木耕太郎の同名小説を佐藤浩市、横浜流星主演で映画化した本作は、ボクシングに命をかける男たちの生きざまを描いたドラマである。本作をきっかけに若きボクサー・翔吾を演じた横浜流星がボクシングのプロライセンスを取得したのも話題となったが、徹底的にリアルを追求したボクシングシーンは息をのむほどの迫力だ。 |
大分県は瀬々監督の出身地であり、佐藤浩市演じる元ボクサーの広岡とその姪・佳菜子(橋本環奈)の故郷として登場した。広岡が帰省するシーンの舞台は、ドローンで撮影された佐賀関漁港付近。佐賀関漁港といえば、大分を代表する高級ブランド魚「関あじ・関さば」が水揚げされるところで、速吸瀬戸(はやすいのせと)の荒波のなか、漁師が一本釣りするマアジやマサバは、引き締まった身とプリプリとした食感が特徴だ。 |
佐賀関のシンボルである早吸日女(はやすひめ)神社は、海上安全の神・厄除開運の神として古くより地元の人々の信仰を集めている。劇中では7月下旬に行われる早吸日女神社のお祭り「関の権現早吸日女神社夏季大祭」を再現。地元住民の協力のもと、権現通り商店街を神社のおみこしや地域の山車2台が練り歩いた。お祭りのにぎやかさと佳菜子の静かなる決意の対比が印象的なシーンとなっている。 |
さてロケ地となった大分市は、瀬戸内の海、高崎山など豊かな自然のもと、おいしいものがそろっている。前述の「関あじ・関さば」以外にも「豊後牛」「大分ふぐ」「とり天」「かぼす」などなど、新鮮な海の幸、山の幸が両方楽しめるのも魅力だ。劇中、佳菜子が広岡と翔吾に差し入れしたお弁当に入っていたのは、大分の郷土料理の「鶏めし」。鶏肉とごぼうや人参などを炊きこんだ「鶏めし」は、大分ではハレの日や親せきが集まる場などで作られてきた料理だ。撮影スタッフも、ロケ弁で出た「吉野の鶏めし」に舌鼓を打っていたそう。 |
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『春に散る』 ・発売日:Blu-ray&DVD発売中・販売元:ギャガ ・発売元:映画『春に散る』製作委員会 ・価格: Blu-rayコレクターズ・エディション:7,150円(税込) DVDコレクターズ・エディション:6,050円(税込) DVDスタンダード・エディション:4,400円(税込) (C)2023映画『春に散る』製作委員会 |
監督:瀬々敬久 ノンフィクションの傑作『深夜特急』三部作をはじめ、数々のベストセラーを世に放ってきた沢木耕太郎の同名小説の映画化。主演に佐藤浩市と横浜流星を迎え、共演に橋本環奈、片岡鶴太郎、哀川翔、窪田正孝、山口智子と、役柄に血を通わせる豪華俳優たちが集結した。『糸』『ラーゲリより愛を込めて』の瀬々敬久監督が、世代も考え方も異なる人間と人間が、ぶつかり合いながらも愛や絆を見つけようともがく姿を描く。主題歌は「感動し、堪えても3回泣いてしまいました」とコメントするAIが担当した。 40年ぶりに故郷の地を踏んだ、元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)。引退を決めたアメリカで事業を興し成功を収めたが、不完全燃焼のまま突然帰国したのだ。かつて所属したジムを訪れ、かつて広岡に恋心を抱き、今は亡き父から会長の座を継いだ令子(山口智子)に挨拶した広岡は、二人の仲間に会いに行く。そんな広岡の前に不公平な判定負けに怒り、一度はボクシングをやめた黒木翔吾(横浜流星)が現れ、広岡の指導を受けたいと懇願する。そこへ広岡の姪の佳菜子(橋本環奈)も加わり不思議な共同生活が始まった。やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん一度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいく―。 |