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『博士の愛した数式』『峠 最後のサムライ』などで知られる名匠・小泉堯史監督が、吉村昭の同名小説を映画化。江戸時代末期、疱瘡(天然痘)が流行し多くの命が奪われる中、未曽有の病から人々を救おうと奮闘した町医者の姿を描く。松坂桃李が演じる笠原良策は、福井藩に実在し、種痘(予防接種)の普及に尽力した人物だ。撮影は実際の良策が過ごした福井県をメインに行われた。そんな彼の挑戦の軌跡を、北陸道を中心に辿ってみよう。 |
| 小泉堯史監督の作品は、細やかな人物描写に加え、風景描写の美しさでも知られるが、本作でもはっとするほど美しい福井の風景が、随所に映し出される。「日本の滝100選」に選ばれた「龍双ケ滝」のオープニングに続いて登場するのは、あわら市の「鴫谷山の切通し」。良策が診療のため村へ向かうシーンで使用されたこの場所は、かつて村人が通行の利便性のために、鴫谷山をわずか3カ月で切り開いたという。荒々しい岩壁が両側に迫る切通しの景色は、圧巻のひと言。 | ![]() |
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診療で村を訪れた良策は、そこで疱瘡に罹っている村人を発見する。苦しむ村人を前にしながらも、なす術がない良策。彼が忸怩(じくじ)たる思いを抱くこのシーンは、「おさごえ民家園」で撮影された。ここでは、江戸時代の民家5棟や土蔵などを見ることができ、映画さながらの雰囲気を味わえる。豪農や庄屋の家だった建物は、福井県各地から移築されたもので、地域により柱の太さや部屋の配置などが異なっているのにもご注目。 |
| 北陸自動車道福井IC近くにある「おさごえ民家園」から、さらに南下して、「大塩八幡宮」へ。平安時代(887年)に創建された由緒あるこの古社には、本殿のほかに6つの社があり、なかでも疱瘡の神を祀る寿王神社が有名だ。また、84畳もの広さを誇る拝殿は、木組みなど当時の建築様式を今に伝えており、国の重要文化財に指定されている。劇中では良策が藩医の元沖と稽古に励むシーンで登場した。 | ![]() |
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監督:小泉堯史 江戸時代末期、天然痘の恐怖に立ち向かった実在の町医者・笠原良策の奮闘を描いた感動の時代劇。原作は吉村昭の小説『雪の花』。監督は『雨あがる』『博士の愛した数式』などで知られる小泉堯史。主演は松坂桃李が医師・良策を力強く演じ、妻・千穂役には芳根京子、蘭方医・日野鼎哉役には世界的俳優・役所広司らが脇を固める。さらに本作は、第37回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門にも選出された。 江戸時代の末期、命を奪う恐ろしい病として天然痘が広がり、人々を苦しめていた。福井藩で漢方医を営む笠原良策(松坂桃李)は、多くの患者を前に治療の術を持たず、自責と無力感に苛まれていた。そんな彼を、妻の千穂(芳根京子)が明るく支え続ける。良策は救いの手がかりを求め、京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)の門を叩く。学びを重ねる中で、海外では「種痘」という予防接種が行われていると知る。しかし、その技術を導入するには種痘の苗の入手や幕府の許可が必要で、実現は極めて困難だった。それでも人々を救いたいという彼の強い志は、やがて藩を動かし、幕府までも巻き込むことになる。 |
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