劇作家・横山拓也による演劇ユニット「iaku」の同名舞台を、「凶悪」で脚本を務めた高橋泉、上海国際映画祭アジア新人賞を受賞したまつむらしんご監督が映画化。大学に入学し、恋に胸をときめかせる18歳の千夏(吉田美月喜)に突如突きつけられたのは、若年性乳ガン罹患(りかん)という事実。千夏と母・昭子(常盤貴子)の揺れ動く心を丁寧かつポップに描いた本作は、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)で撮影された。 |
和歌山市の中心部から車で約15分。映画の舞台となった雑賀崎は、古くは万葉集に「紀伊国の 雑賀の浦に出で見れば 海人の燈火 波の間に見ゆ」と歌われ、また山の斜面に民家が建ち並ぶ風景が“日本のアマルフィ”とも呼ばれる風光明媚(めいび)な場所である。撮影前のロケハンでこの地を訪れ、すっかり風景が気に入った監督は、物語の大半をここで撮ることを決意した。千夏がそんな美しい街並みの中を自転車で風を切って走るオープニングは、とても爽やかでこれから始まる物語に胸を高鳴らせてくれることだろう。 |
この雑賀崎を含む和歌浦湾一帯は「和歌の浦」と呼ばれ、その美しさは万葉の歌人や豊臣秀吉、江戸時代の画家たちなど、多くの人々をとりこにし、数多くの文化芸術が生まれた。2017年には「絶景の宝庫 和歌の浦」として日本遺産に登録。潮の満ち引きによって刻一刻と表情を変える情景は、今も変わらずに私たちに感動を与えてくれる。和歌浦湾が一望できる「紀三井寺」や学問の神様・菅原道真をまつる「和歌浦天満宮」などをドライブで巡りながら、和歌の浦の絶景をご堪能あれ。 |
さて、狭い路地と階段が迷路のようになっている“日本のアマルフィ”こと雑賀崎は漁師の町である。ここを訪れたらぜひ訪れたいのが、雑賀崎漁港だ。ここでは漁を終えたばかりの漁船から直接とれたての魚が購入できる「はた売り」を行っており、ついさっきまで海を泳いでいた足赤エビやヒラメ、カマスなどの魚が手ごろな価格で手に入るとして人気を集めている。基本的には通年(火曜日・土曜日・祝前日休み)開催されているが、天候等によって中止日もあるのでご注意を。 |
|
|||||||||
『あつい胸さわぎ』 ・発売日:DVD発売中・販売・発売元:アルバトロス ・価格:DVD:4,180円(税込) (C)2023『あつい胸さわぎ』製作委員会 |
監督:まつむらしんご 演劇ユニットiakuの横山拓也が作・演出を務め、各所で大きな話題を呼んだ傑作舞台「あつい胸さわぎ」を、上海国際映画祭アジア新人賞を受賞したまつむらしんご監督と『凶悪』で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した橋泉とのタッグで映画化。“若年性乳がん”と“恋愛”をテーマに、揺れ動く母娘の切実な想いを繊細さとユーモアを持って描きだす。母親を演じるのは、監督が“太陽のような温かい存在感”と出演を熱望した常盤貴子。主人公“千夏”には、圧倒的な眼差しを持ち「ドラゴン桜」で注目された吉田美月喜が18歳の不安定な気持ちをリアルに演じる。 港町に暮らす武藤千夏(吉田美月喜)と、母の昭子(常盤貴子)は、つつましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。千夏は、初恋の相手である光輝(奥平大兼)と再会し、母の昭子も、職場の木村(三浦誠己)に惹かれはじめており、親子そろって恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。娘の身を案じた昭子は本人以上にネガティブになっていくが千夏は光輝との距離が少しずつ縮まるのを感じ、それどころではない。少しずつ親子の気持ちがすれ違い始めた矢先、医師から再検査の結果が告げられる。初恋の胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎに変わっていった……。 |